借金は墓場まで持っていく?

  • URLをコピーしました!

Q.従業員4人の小さな会社を経営しています。どうにか今も事業を続けられていますが、先のことを考えると不安しかありません。借金は大きく、これを継がせるわけにはいかないし、かといって私が生きているうちに返済することもとてもできません。借金と会社のケジメの問題、どうしたらいいでしょうか?


大きくなった借金を背負う会社を、最終的にどう着地させればいいか、というお悩みですね。

大きく膨らんでしまった借金を誰かに引き継がせるわけにはいかない、という社長のお考えには深く共感いたします。
ときに、とても返済できないような借金を後継者に押し付けることを当然と感じているような社長がいます。
また、無策で返済不能なレベルの借金を継いで、連帯保証までする後継者もいます。
好き好んで悲劇を招いているようなものです。
こんな負の連鎖は断ち切りましょう。

借金は墓場まで持っていく?

別の記事で「借金が残る場合でも、自ら決着をつけるべきだ」と書きました。
会社を継いでくれる後継者もいないし、M&Aで売ることもできない。残る選択肢は廃業ということになる。
しかし、廃業をしたら借金が残ってしまうからそれは避けたい……。

こんな状況に対する私見を述べさせていただいた次第です。
たしかに、借金が残ることが分かっていて廃業に踏み切るのは勇気がいります。
痛みも伴います。そこで決着のつけ方として、こんな方法はどうでしょうか。

「社長が借金をお墓までもって行く」

私のアイデアはこれです。
とにかく社長の命が尽きるまで、事業を継続して返済を続ける。
リスケジュールなどで時間稼ぎをしてでも、この状態をキープする。

そして社長は死去を迎える。
この時、いっしょに会社も廃業させ、借金は塩漬けにしてしまおうという狙いです。
放置された借金を銀行としてもどうすることもできない、という状態を作るのです。

社長が亡くなり、会社は誰も継がないで放置されたとします。
すると銀行は、借金の返済を求められません。
会社に返済を求めようにも、話をする相手がいないのです。

もちろん銀行にやる気があれば、裁判所などを使って、口座等の差し押さえをしてくるかもしれません。
でも、誰かの痛みになるわけではありません。
だって、社長はもうこの世にいません。
銀行に対応しなければいけない次期社長もいないのです。

私のクライアントの社長さんの中にも、借金を墓場まで持っていく作戦を実行している方がいます。

社長は79歳。準備はできているから、あとは続けられるだけ会社を続ける。
まだかろうじて利益が出ているが、資金繰りが苦しくなったら銀行への月々の支払額を減額してもらえるようにお願いをするつもりだ。

とにかく時間を稼ぎたい。
膨らんでしまった借金の完済はもう考えていない。
狙い通り社長が借金を墓場まで持っていけたら、あとは会社とともに放置され、事実上消滅することとなるだろう。

妻や子供たちには「自分の死後、すぐに相続放棄をするように」と伝えてある。


連帯保証の相続は要注意!


借金の連帯保証は要注意です。

会社の借金の連帯保証に社長になっている場合は多いことでしょう。
もし亡くなった社長の家族が、社長を相続したら、この連帯保証の義務まで引き継いでしまします。

相続というものは、故人の権利義務をまとめて引き継ぐものです。
おいしいとこだけ引き継ぐことはできません。
亡社長を相続したら、連帯保証まで引き継ぎます。
銀行からの借金の請求を拒むことができなくなってしまいます。

だから、相続人になり得る家族は、相続放棄をします。

これで会社の借金に対して、無関係という立場をとれます。
たとえ銀行が「会社の借金の件でお話が……」と言ってきても、「私は知りません」でおわりです。
「会社のことをどうするんですか?」と聞かれても「相続放棄をしているから、私には関係ありません」と拒絶すればいいでしょう。
実際、何かをしようにも、その権限すらないのですから。

「親や配偶者が残した借金が、本当に『相続放棄しました』で片付くの?」と質問されることがありますが、今の日本の法律では、あくまで個人が原則です。
お家制度ではないのです。
親がやったことの責任は子供がとらなければいけない、ということにはなっていません。

最低でも、借金を除いた収支はプラスに

借金を墓場までプランですが、実際のところの成功率はどのようなものでしょうか。
正確なことは言えませんが、難度は低くありません。

人はコロッと亡くならない場合のほうが多いでしょう。
健康状態がだんだん悪化したり、老化により判断能力が衰えていったり……と、社長のコンディションが少しずつ悪くなる可能性のほうが高いと思います。
そんなときでも、まだ会社を続けていられるか。
このあたりが難しくなるケースがありそうです。

この方法を実現するために最低限の条件があります。
それはお金が回ることです。

借金の返済猶予など使ってもいいのですが、とにかくお金が底を尽かないこと。金が尽きたらそこでおわりです。
やはり基本的には利益が出ている会社でないと、いつか資金が枯渇してしまいます。
「借金のことさえ切り離せば会社の維持に必要な金は稼げている」
この計画を達成するための最低ラインでしょう。

事前準備がものを言う

借金を墓場までプランにチャレンジするならば、事前の準備は必要です。

たとえば、このプランが実現できた場合、家族は相続放棄をすることになります。
相続放棄をしたら、借金や連帯保証を引き継がない代わりに、資産も相続できません。
それでいいのでしょうか。
おそらく「資産は家族に遺してあげたい」と思う方が多いことでしょう。
そのためには、事前に仕込んでおかなければいけないのです。

社長の個人名義の口座にお金を残しておいても相続はできません。
たとえばそのお金を、生命保険という形にしておけば、遺族がお金を手にできる可能性が作れます。
やり方はほかにもあり得ますが、ケースバイケースなのでここでは深入りしません。
重要なことは資産を家族に遺すためには、事前に仕込んでおかなければいけないという点です。

社長が亡くなったあとの会社をどうするのか、という疑問も生まれます。
代表者がいなくなったから何もできない、と放置することもできるでしょう。
しかしそれでは混乱が生じるし、ちらかったままとなります。
誰かに迷惑をこうむらせることになってしまうでしょう。
最低限の事後処理をするための準備も考えたいところです。
たとえば誰かに委託して、必要な行動をとってもらうようにすることを検討してみませんか。

そして、最後の準備としては、このプランが成就しなかったときの備えです。
社長が亡くなる前に、会社の資金が枯渇してしまうケースが代表例でしょう。
このような結末に備えた手を打っておくことも忘れないでいていただきたいところです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人