Q.銀行への借金を返せるうちにと、早めに廃業を決断しました。しかし、従業員の解雇で神経をすり減らしています。どうすれば上手く辞めさせることができますか。
A.会社の廃業では、はやり従業員の雇用を終わらせるところが最大の山場となります。
これまで廃業をお手伝いさせていただいた社長のほとんどが口をそろえてそう語っていました。
ご相談者は、廃業は決断したものの、従業員のことで大きなストレスを抱えていらっしゃるご様子です。
ストレスの原因を考えつつ、取り組み方を考えてみましょう。
まず一つ目のストレスの原因が、保身から生じるものだと思います。
「廃業すると言ったら、従業員にどんな顔をされるか?」
先のことを考えると不安や恐れが沸いてくるのではないでしょうか。
誰だって自分を守りたいという潜在的な思いがあります。これを無理に否定する必要はありません。
しかし、だからといって苦痛を避け続けるわけにもいきません。
それで廃業をズルズルと先送りしたら、より状況は悪くなることでしょう。
従業員を辞めさせることによる「目の前の痛み」と、痛みを避けたことにより生じる「将来の痛み」のどちらを取るべきか。
両者を比較してください。
それで従業員を辞めさせる痛みを取るほうを優先するならば、思い切って廃業を進めていくしかありません。
2つ目のストレスの原因は、社長の「業務を上手くやらなければいけない」というプレッシャーからきていると思います。
廃業を決断したところで、パッと一瞬にして会社が無くなるわけではありません。
すでに受けている仕事をこなし、資産を処分したりしなければいけません。
材料費や給料等の支払いだって残っています。
会社を運営しながら上手に着地させなければいけないのです。
ところが、廃業の決定を知ったことで従業員と会社の関係がこじれてしまったら、それもかなわなくなってしまいます。
社長:「ウチの会社を廃業させることにしました」
従業員:「だったら明日から会社には来ません!」
こうなってしまったら、もう仕事は回りません。
さて、どうすればいいか。
たしかに法律上の解雇ルールがあります。
「1カ月前に解雇予告をしたからいいんでしょ?」なんて言われることもあります。
でもそれだけで、最期までしっかり仕事をしてくれるでしょうか。
社長を攻撃することをせず、その決断を受け入れてくれるでしょうか。
やっぱり「法律だから」では、従業員は納得してくれれないでしょう。
そこで工夫が必要なのです。
私がよく使う方法は、最低限の法律のルールよりも良い退職条件を提案を作ることです。
従業員には最低条件よりもメリットのある退職条件を提示する一方、最後まで自分の仕事をしっかり果たすことを約束してもらいます。
これで業務に穴ができてしまうことを防げます。
また、強制的に辞めさせられるのではなく、従業員が自ら退職に合意することになるので、怒りや不満を小さくすることができます。
もう一つのおすすめの工夫は「第三者」を使うことです。
私は廃業を発表する従業員集会に同席することがありますが、第三者の立場だから、話がおかしな方向になったときに交通整理ができます。
社長が自分の口では言いにくいことでも、第三者だから代わりに言ってあげることができます。
廃業の場面は、社長1人に対し、従業員多数となりがちです。
孤立しそうな場面に、相談ができて、一緒に歩んでくれる第三者が存在したら、それはとても心強いことでしょう。
《追記》
本件に関連するテーマで、YouTubeに動画をアップしています。
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