廃業すると多額の税金がかかるって?

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Q.顧問の税理士から「廃業して会社をたたんだら大きな税金が課される」と脅かされました。どうしてそうなるのでしょうか? 私たちの会社は廃業できないのでしょうか?

A.顧問税理士の先生は、脅かしてやろうとしているのではないと思いますが・・・
とにかく、普通に廃業すると多額の税金がかかると言われてしまったのですね。

たしかに状況によっては大きな税金がかかることがあり得ます。
この点「廃業するのに大きな税金まで取られるのは納得できない!」というのが一般的な感覚なのかもしれません。

廃業の2大課税ポイント

廃業の場面では、大きく2つの課税ポイントがあります。

廃業(および清算)は主にこのような流れになります。

《 解散決議 → 清算開始 → 資産・負債の整理 → 残余財産の分配 》

廃業を決定すると会社は清算を開始します。
会社は営業活動をしてはいけません。
会社を清算することを目的とする存在となるので、ただ資産を売却し、負債の返済を行います。

しかし、清算作業に入ろうが、法人の確定申告については引き続き行わなければいけません。
収支の報告をするし、利益が出ていれば税金も発生するのです。


①含み益のある不動産売却で課税

ここが1つ目の課税ポイントです。

このポイントで大きな税金が発生するパターンは、清算に含み益のある不動産の売却が伴う場合です。

たとえば、簿価では3000万円と計上されていたけれど、実際に売却すると1億円だったとします。
すると7000万円の利益が生じ、そこに法人税等がかかることになります。
ここだけで2000万円前後のの税金が生じるかもしれません。

廃業の場合、昔に安い値段で仕入れた土地を売却することになることも多いので、このようなケースは少なくありません。



②残余財産の分配で課税

続いてもう一つの課税ポイントです。
それは、清算活動の最後の「残余財産の分配」の時です。

資産を換金し、負債をすべて支払い、それでも残ったお金は株主に戻されます。
このときも利益が生じ、課税がなされることがあるのです。

たとえば会社設立当初、社長が1000万円を出資して事業を開始した。
会社は利益を蓄えながら財務がよくなり、最終的には残余財産として1億円が会社に残った。

この1億円を株主である社長に戻せばそこに9000万円の利益(=残余財産1億円-出資金1000万円)が生じたということになります。
数千万円の課税ということに・・・

廃業で税金が発生する場面と理屈はご理解いただけたでしょうか。
ときには第1の課税ポイントと第2の課税ポイントの合わせ技で多額の税金が生じてしまい「全然手元にお金が残らないじゃないか!!!」となることもあります。


廃業にまつわる税金を節約したい!

「できれば手元に残せるお金を増やしたい」
こう思うのは自然なことです。
そこで何か手がないか工夫を考えてみましょう。

一つ目は、「退職金」を利用することです。
社長が株主でもある場合、退職金を利用するほうが税金は低くなるケースが一般的でしょう。

たとえば、株主への残余財産の分配として1億円を会社からもらうよりも、社長の退職金として1億円もらうほうが税金が安くなりがちです。

なお税務上、社長の退職金が会社の経費として認められる範囲にはセオリーがあります。
上限なく退職金を経費にできるわけではありません。

「自分はいくらまでなら退職金をとれるか?」
顧問税理士さんに問合せしてみてください。

いっそ、会社はたたまない

もう一つの工夫は、不動産を売らないこと、さらには「会社をたたまないこと」です。

不動産を売却するから含み益が顕在化して税金が発生するし、会社をたたむから残余財産の分配で課税されるのです。
だったらその根っこを無くせばいいという発想です。

廃業を決断することになった根本には、事業継続の問題があったことでしょう。
収支の赤字であったり、後継者の負債であったり・・・

しかし、事業をやめるということと、会社を完全にたたむということを同一視する必要はありません。
むしろ別のことだと発想してみるのです。

たとえばあなたが商社として、卸業をやっていたとします。

卸業ごと会社をたたむことができれば、この卸業だけをやめることだってできます
卸業だけをやめても、会社と会社が保有する資産は残ります。
これらは生かすことで、税金が発生するポイントを回避することができるのです。

たとえば事業で使っていた会社の土地建物を、卸業の廃止後、他社に貸し出す。
すると会社はそのままで、卸業から不動産賃貸業へと転業したということになります。
課税ポイントが回避できていることをご理解いただけるでしょう。

実務の現場では、廃業の案件であっても、このように事業だけやめて会社を残すことになる案外多いものです。

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