Q.廃業を考えているのですが、会社をたたむときの『相談相手』には誰がなってくれるのでしょうか?
A.「廃業の相談相手に困った」という話は、これまで何度も聞きました。
奥村に出会うまで、誰にも相談ができずに孤独だったという方もいました。
たとえば、周囲の社長仲間に相談したら、バサッと否定されてしまって話をする気が失せてしまたというケース。
「廃業なんてもったいない!」
「後ろ向きなことを考えていないでもっとガンバレ!」
世の中は、人の話もろくに聞かず、自分の意見を押し付けようとする人ばかりです。
こちらにはこちらの事情があるし、思うところがあるのですけどね・・・
そこまでくみ取ってくれる人はなかなかいません。
税理士、弁護士、司法書士・・廃業はどの資格に相談すべき?
また誰か「専門家」に相談しようとした際に「誰が廃業の専門家かわからない」という声もたくさんありました。
そうなのです、実は本当の意味での廃業の専門家はほぼいません。
まず、日本には税理士や弁護士、司法書士などの資格制度がありますが、その仕組みでフォローしているのは廃業の一部分にすぎません。
「廃業のことも顧問税理士に相談すればいい」とお考えになる社長も多いと思いますが、本来の税理士の役割からすると、相談できるのは廃業に関わる税務だけが守備範囲となります。
(実際には、廃業に関わる税務「以外の論点」のほうが、はるかにたくさんあります)
結局、資格だけではその人が廃業の相談相手にふさわしいかは判断できません。
廃業のサポートをするか否かは、あくまで属人的な技術や姿勢によります。
しかしこれまた、廃業の相談に積極的に乗ろうとしている専門家は少ないところです。
相談相手選びは大きなリスクでもある
まずはこんな廃業相談にまつわる背景を押さえておいてください。
相談という行為は、一般的に思われているほど軽いものではありません。
誰に相談するかで未来が大きく変わります。
問題解決につながることもあれば、下手をすると、間違った道へ進めさせられてしまう。
こんな相談相手選びの失敗は、過去にもたくさん見てきました。
相談相手選びには、可能性とリスクが共存しています。
廃業相談に求めるものは?
さて、前段が長くなりました。
相談相手選びについての回答を進めていきましょう。
ですが、その前にもうひとつ質問をさせてください。
あなたは廃業の相談に何を求めているのですか?
そもそもこの点ががぼんやりとしてしまっているケースが非常に多いように感じます。
みなさん自分が何を求めているかはっきりしていないのに、なんとなく相手を選び、なんとなく相談してしまっているのです。
冷静に考えてみたら、これで相談が上手くいくわけはありません。
「廃業の手順を知りたい」
「スタッフを辞めさせる方法を知りたい」
「廃業することで起きそうな問題を知りたい」
あなたが相談相手に求めたいものがあるはずです。
「なんとなく話を聞いてほしい」という希望がダメだと言っているのではありません。
自分のまとまらない考えを相手に話をして、一緒に考えてもらうことだって大切です。
「愚痴を聞いてもらいたい」
「決断のために考えをまとめることを手伝ってほしい」
こんな希望でも、自分自身がそれを自覚できていることが大切なのです。
廃業の相談相手の守備範囲を見極める
自己の求めるものを知ったうえでの相談相手選びです。
自分が求めていることがわかれば、相談相手が絞れます。
少なくとも、相談を持ち掛けるべきではない相手はわかることでしょう。
ここで注意してもらいたい点があります。
ひとつは、専門家とされる人でも廃業について万能な人は少ないことです。
この話はすで触れました。
「専門家だからなんでもわかっていて当然」と甘えないことです。
相手の守備範囲や得意なところを見定め、かつ、自分が相談したい内容を考慮したうえで、相談相手とすべきかどうかを判断してください。
相手の思惑は何か?
もう一点、外してはならないポイントがあります。
相談しようとしている相手の「思惑」を見抜くことです。
相談者であるあなたのため、真に、純粋に、相談に乗ってくれる人は世の中にいません。
相手にも何かしらの思惑や感情があり、それは相談の受け答えに大なり小なり影響を与えてしまうものだからです。
あなたは相談相手の思惑や感情からくるバイアスを意識して、回答の受け取り方を調整するべきです。
さらには、そもそも相談するかどうかも、相手の思惑を考慮して決めたほうがいいでしょう。
たとえば、M&A業者が「廃業の相談に乗ります!」とアピールしていたとしましょう。
でも彼らの真の思惑は「会社を売って手数料を稼ぎたい」なのです。
こういう相手に廃業の相談をしたところで、相手はどうにか話をM&Aにもっていこうとするか、適当なこと言ってかわそうとするかのどちらかでしょう。
相談相手選びの奥深さ、難しさが伝われば幸いです。